大学ネーミングライツ・インタビュー④大阪教育大学

国立大学で導入が進む大学施設内のネーミングライツ(命名権)。第4回目のインタビューは国立大学法人大阪教育大学です。パートナー企業と包括連携協定及びネーミングライツ契約を結び、共同研究などの発展的な取り組みを実施しています。大阪教育大学総務部広報室の西芝様、総務部施設課長の杉本様、同課専門職員の八杉様、学術部学術情報課長の井上様、同課サービス係長の谷口様にネーミングライツパートナーとの取り組みや今後の展開についてお伺いしました。

――大阪教育大学の概要を教えてください。

本学は、名前の通り教育大学で、大阪府柏原市にあるメインキャンパスの柏原キャンパスと大阪市内にある都市型キャンパスの天王寺キャンパスの2つのキャンパスを持っております。

学部は教育学部一つですが、学校現場で必要とされる教員を養成する「教員養成課程」と学校を取り巻く地域や社会を含む「チーム学校」の中心メンバーとなる人材を育てる「教育協働学科」に分かれます。教員養成課程は、教員の免許取得が卒業の要件になりますが,教育協働学科は開放制の元,教員免許取得が必須となっておりません。また、国立大学で唯一の夜間に学べる教員養成課程を持っており、5年間の学びの中で小学校の教員をめざすことができますし、3年次から編入もできます。

大学院の修士課程では、2021年4月に改組を行い、高度な心理学の教育を行い公認心理師の取得をめざすコースや、主として留学生や社会人向けのコースなどを設置しています。
また、教職大学院は、全国でも有数の規模を誇っており、関西大学・近畿大学とともに連合教職大学院を設置し、オール大阪の体制で学部卒業生や現職の教員が高度な教職課程を学ぶことができるコースがあります。
さらに、特別支援学校教諭一種免許を取得できる特別支援教育特別専攻科も設置しております。

学生数でいうと、学部・大学院・専攻科あわせて約4000人強が
在籍し、西日本最大の教員養成大学となっています。

「先端技術を活用した新たな学びの実現」の想いが一致。ネーミングライツ契約をきっかけに、様々な発展的取り組みを実施。

――大阪教育大学のネーミングライツについて教えてください。

柏原キャンパスの附属図書館本館、天王寺キャンパスの附属図書館天王寺分館、それぞれの施設内に図書館用語でラーニングコモンズと呼ばれる「まなびのひろば」というスペースがあります。そのネーミングライツを公募させていただきました。
従来の図書館は、静かに黙って一人で勉強するのが普通だったのですが、ラーニングコモンズは、しゃべりながらみんなで勉強できる部屋という概念から成り立っています。学生たちがみんなで話し合って勉強する場所として提供しています。
東京書籍とネーミングライツ契約を締結し、2020年9月から「東京書籍 Edu Studio(エデュスタジオ)」となっています。

柏原キャンパス附属図書館本館:東京書籍 Edu Studio(まなびのひろば)

――「まなびのひろば」のネーミングライツを東京書籍がどのような目的で落札されたのでしょうか?

東京書籍さんは小・中・高の紙およびデジタルの教科書/教材を発行しています。ネーミングライツとともに、デジタル教科書体験コーナーを東京書籍Edu Studio内に設置していただいています。
今、小学校などの学校教育ではICT教育を進めていかなければならず、文科省からGIGAスクール構想が打ち出されています。GIGAスクール構想とは、小中高等学校などの教育現場で児童・生徒各自がパソコンやタブレットといったICT端末を活用できるようにする取り組みのことで、一人一台の端末を生徒に持たせて授業を行う構想になっています。

教科書も紙からデジタルに変えていこうという流れがあり、各教科書会社さんがそれぞれデジタル教科書を提供されています。東京書籍さんもデジタル教科書に力を入れています。


東京書籍さんからは、

  • 紙の教科書・デジタル教科書についての、教員や教員の卵である学生からの貴重な意見が欲しい
  • 学生が現場に出る前にデジタル教科書に慣れてほしい
  • ネーミングライツ施設を中心に、教員養成という教育の最前線でしかできない取組を実践したい
  • コロナ禍において児童・生徒一人一台の端末が配付されているなか、教員をめざす学生たちに最先端のデジタル教科書に触れてほしい

と伺っています。デジタル化が進む学校現場をサポートしたいという強い思いがあり、その一環としてネーミングライツに応募いただいたとのことです。今のところデジタル教科書に慣れている人が世の中にあまりいないのが、普及が進んでいない理由のひとつだと思います。

東京書籍Edu Studioで東京書籍のデジタル教科書/教材を使って勉強し、本学を卒業した学生の多くは現場の先生になります。あくまで私見ですが、学生時代に東京書籍のデジタル教科書で学んだ経験は、必ず将来に活かされると思います。

デジタル教科書/教材体験コーナー

我々としてもすごく助かっていて、本来デジタル教科書を使おうとしたら教科書会社と契約してお金を払わないといけないのですが、無償で体験でき、将来教育現場で使用することになるデジタル教科書を学生の段階から慣れてもらうことができます。早い人では教育実習の段階で「デジタル教科書を使えるでしょ」と言われてしまうこともあります。そのような時の戸惑いをなくすためにも学生にはもっと利用してほしいなと思います。

――東京書籍さんとはかなりいろいろな取り組みをされていますね。

募集要項では、施設のネーミングライツ(愛称・呼称)の付与、サイン等の設置、HPでの記載等がネーミングライツパートナーの特典になっています。その他、外部の方が大阪教育大学の施設を利用するとき、通常は施設の利用料が発生しますが、ネーミングライツパートナーの方が、例えば講演会や会議などで大学の施設を利用したいときに無償で利用できる特典があります。

東京書籍さんとはネーミングライツだけでなく、地域貢献や生涯教育も含めてお互い日本をよくしていこう、お互いに協力をしていこうという目的で包括連携協定を結んでいます。
ネーミングライツは入り口として、愛称だけでなくパートナー企業とお互いに発展的な関係を構築していこうというのがネーミングライツ制度のもともとの考えでしたので、協定を結んで話し合いを進めて様々な取り組みをしています。
具体的には、東京書籍Edu Studio内においては、学生向けのデジタル教科書体験会の開催、大学院教育学研究科の院生が算数・数学デジタル教科書について研究成果を発表したり、東京書籍Edu Studio外ではネーミングライツ協定記念のセミナーなどを実施したりしました。

大阪教育大学と東京書籍とのネーミングライツに関する協定記念セミナー

もともとは、大学全体のインフラ予防保全等の施設設備を実施するための財源を確保することを目的としていましたが、学生への還元など含めその財源確保以上のメリットが出ています。大学と企業がうまくマッチングし、連携できた良い例じゃないかなと思っています。

――学生への知名度は上がっているのでしょうか?

ラーニングコモンズの「まなびのひろば」は、「まなひろ」と愛称で呼ばれるほど学生から親しまれ、昼休みや空きコマによく利用されていました。コロナ前には、学生が入りきらないぐらいの人気でした。「東京書籍Edu Studio」と名前が変わったのが学生の夏休み中だったので、知られているかどうか心配でしたが、図書館でアルバイトをしている学生に聞いたところ、ホームページで変わったことを確認しましたと話していました。
コロナの影響でグループ学習は現在できないのですが、もともと非常に人気の場所なので、学生はよく足を運びます。看板もありますし、ガラスの壁面にたくさんの「東京書籍Edu Studio」のロゴシールが貼ってあるので、目に入
りやすく、認知度は高いと思っています。

看板・ガラス面に記載し、愛称の普及と定着に努める

室内にもネーミングライツパートナーとして紹介

デジタル教科書の体験スペースも、学生が個人的に利用でき、一回入ると長時間利用しています。また先生もデジタル教科書に興味を持っているので、ぜひ学生に触れてほしいということで授業に使いたいという申し出があり、体験スペースを使ってもらうということもたびたびありました。

――ネーミングライツを募集されている施設はありますか?

残念ながら今はありません。どの施設が魅力的なのかを含めて検討をしています。
募集をかけようとすれば施設はいくらでもあるのですが、応募がなくて残り続ける状況も良く
ないので、学内で精査しています。他の総合大学ですとリクルート目的でのネーミングライツの募集が多い印象ですが、大阪教育大学だと卒業後は先生になる学生が主となるため、リクルート目的で希望される企業はあまりないかなと思います。
国立の教育大学では大阪教育大学がネーミングライツ制度を初めて実施しましたが、現在も唯一なのもその辺が理由かなと思います。

――企業さんから提案は受け付けられますか?

「こういうところで実施したいんだけど」と相談いただければ、学内で検討させていただきますので、ぜひお声がけください。現在募集している施設がないので、申込書や募集要項はないのですが、ホームページ上には「まなびのひろば」のネーミングライツ募集時の募集要項は掲載されています。
大阪教育大学は、日本の学校教育を担う学生を受け入れる大学ですので、その辺を理解いただける企業であれば、大小問わずご相談いただければと思います。


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