大学ネーミングライツ・インタビュー③琉球大学


国立大学法人で導入が進む大学施設内のネーミングライツ(命名権)。国立大学法人琉球大学は、体育館や大学会館などで企業とネーミングライツ契約を締結し、有効活用しています。今回、琉球大学施設運営部施設企画課長代理の玉城様にネーミングライツ導入の背景や特徴についてお伺いしました。

人が多く集まる・人が多く通る13施設で命名権を募集

――琉球大学の特徴について教えてください

全国の国立大学法人の中でもキャンパスの敷地面積はかなり大きく、森林に囲まれ、自然が豊かなキャンパスです。地域との共生・協働によって、「地域とともに豊かな未来社会をデザインする大学」を目指すとともに、新しい学術領域であるTropical Marine, Medical, and Island Sciences (TIMES:熱帯島嶼・海洋・医学研究)の国際的な拠点として「アジア・太平洋地域の卓越した教育研究拠点となる大学」を目指しています。

主要なキャンパスは「千原キャンパス」と「上原キャンパス」と2つあり、7つの学部と9つの研究科が入っています。現在は、2つのキャンパスが道を1本隔てて隣り合っていますが、医学部・琉球大学病院のある上原キャンパスは令和6年末に移転する予定です。キャンパス以外にも沖縄県内に教育研究施設等が数か所あります。学生の6割以上が地元沖縄県出身というのも特色の一つです。

――なぜネーミングライツを導入したのですか?

ネーミングライツを導入したのは3年前です。国立大学法人は政府からの配分される運営費交付金の削減が進んでいて、大学独自で財政基盤を強化していかなければならない必要があり、各大学が土地の貸し付けや寄付活動などいろいろな取り組みをしています。琉球大学としては、地方公共団体が始めているネーミングライツの仕組みを財政基盤強化の手段の一つとして取り入れてみようということで始めました。

――どのような施設でネーミングライツを募集していますか?

ネーミングライツを行っているのは、現在は千原キャンパスのみです。
最初は、「提案募集型」のように企業から命名権を行いたい施設の提案を受け付ける形式で、全施設を対象とした案を作りましたが、学内で検討を進める中でまずは13施設から始めようということになりました。「人が集まる」、「人が多く通る」、「企業がスペースを有効活用できそう」など、企業が応募しやすいことを軸に選定しました。

主な対象施設 ※2021年8月現在
中央食堂:学生教職員が集うカフェテリアスタイルの食堂、566席
プロムナード:千原キャンパス内のメインストリート
野外ステージ:学園祭のパフォーマンス等多目的に活用できる広場

中央食堂

ダブルネームで周知を徹底。イベント・企画など企業の要望に柔軟に対応し、ネーミングライツ・パートナーにメリットを還元

――ネーミングライツ契約を締結されているパートナー企業さんについて教えて下さい。

3社と締結しています。
第一体育館の命名権を取得した琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社様は、日本の卓球リーグTリーグに所属し、沖縄を拠点とするプロ卓球チームです。「沖縄から世界へ!」を合言葉に、日々の活動に取り組まれており、スポーツ振興や地域振興・地域貢献の取り組みなどを目的として導入されました。
第一体育館の愛称は、「アスティーダ・アリーナ」です。

アスティーダアリーナ・第一体育館

学生会館の命名権を取得した全保連株式会社様は、家賃債務保証業を全国で展開しており沖縄と東京に本社があります。学生会館は、学生支援課就職係などがあり、学生が多く集まる場所です。学生への認知拡大を目的として導入されました。
大学会館の愛称は、「全保連ステーション」です。

全保連ステーション・大学会館

北食堂の命名権を取得した株式会社菱熱様は、建築設備における空調・給排水衛生・電気設備の総合エンジニアリング企業です。北食堂は主に工学部・農学部の学生が利用しますので、理系学生のリクルーティング目的で導入されました。北食堂の愛称は「琉球大学」「菱熱」「令和」の頭文字をとった「R‘sKitchen」です。

R‘s Kitchen・北食堂

――学生さんへの知名度は上がっているのでしょうか?

上がっていると思います。施設の正式名を変えることは、事務処理上なかなかできないので、「全保連ステーション(大学会館)」のようにダブルネームで記載することを徹底しています。HPはもちろん、広報誌や会議・イベントなどいろいろな開催案内など必ずダブルネームで記載し、周知アピールしています。企業からお金をもらって提供しているわけですし、そこまで徹底しないと応募していただけません。

今回、新型コロナのワクチン接種をR‘sKitchen(北食堂)で行っていますが、その案内もダブルネームです。対象は、琉球大学学生ならびに関係者が中心ですが、琉球大学以外の沖縄県内の大学生も接種可能なので、外部の人にもアピールできる可能性があります。

――ネーミングライツ以外にパートナーにメリットはありますか?

パートナー企業の費用負担になりますが、施設に企業名を付した看板の設置などが可能です。原則3年での契約になりますが、優先的に更新ができるのもメリットの一つです。

また、「こういうイベントをやりたい」など提案や企画してもらえれば実施に向けて動くことができます。実施に対して審議はさせていただきますが、企業の要望に柔軟に対応し、企業側の知名度アップに貢献をしていく方針です。
北食堂のネーミングライツ・パートナーの株式会社菱熱様とは、コロナの影響がありまだ実施できておりませんが、生協とコラボし100円カレーの販売や、菱熱デーを設けてイベントを企画していました。

「地域貢献」「学生リクルート」「産学連携等の促進」

――応募の流れについて教えてください。

募集要項をご覧いただき、所定の申込書に会社の情報や対象施設・希望金額等必要事項を記入の上、ご応募いただきます。その対象施設を公募させていただき、1か月間他の企業の募集がなければ委員会の議を経て優先交渉権者として決定します。もし他の企業と応募が重なった場合は、応募の資格要件やネーミングライツ料など総合的に判断し、決定します。
審査はあります。募集要項に記載していますが、例えば公序良俗に反するものや政治活動に関するものなどは認められません。また、最低入札価格は提示していません。琉球大学が目安としている希望金額よりあまりに低い時は、近隣の施設の金額等を参考に入札金額を協議させていただいたり、お断りさせていただいたりすることはあります。

また、募集している施設以外でも相談は可能です。ただ、学内の審議を経なければならないため決定まで多少時間がかかりますし、必ずできるかはお約束できません。

――どのような企業にご応募いただきたいですか?

なかなか琉球大学でネーミングライツを実施していることをご存じの企業はまだまだ少ないと思いますが、琉球大学のHPに掲載したり、広報活動を通して周知しています。
「地域貢献」「学生リクルート」「産学連携等の促進」が期待できる企業にご応募いただきたいです。また、沖縄の会社ではなくても法人、自然人問わずどなたでも募集要項の応募資格に沿っていれば問題はございません。


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